夢からの便り

忘れ去りたい過去ほど 眉間に刻まれ
悩んだ汗や疲れた陰が 額に滲む
頭の記憶より先に 肩で風を切って歩んだ
白い足跡だけが 残された街
握りこぶしを離せない花ざかりの古拙に舞う
桜の花びらの数を 見送るたび
五月の風が 友を攫ってゆく
初めて手を合わすことの
不可思議の 重さ
気づいてしまえば 震える肩とその指先
「夢から醒めない夢を見ている」怖い、と
泣いていた少女の 手のひらには
もう、指折り数える歳月に節目が覗く
誰かの見た夢の端っこの 通過点を
合掌する手の隙間から薄目を開ければ
厳しい人の優しい眼差しが 微笑んだ
肩をしっかりと寄せ合った 恋人同士だとしても
沈黙の花を 咲かせなくては いけないよ、
春鳥たちに それぞれの 夢を託けるために

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