タイムリミット

冷蔵庫の中で母は 
飛蚊症と老眼の目を凝らしながら
自分の賞味期限を何度も何度も 
毎日 確かめる
私は母の頭の中から 一番初めに腐ってゆく
もやしや木綿豆腐の水を 
流しに垂らして 生ゴミにして毎日棄てる
それでも
白い冷蔵庫の中身は
綺麗な白いものから 腐ってゆく
私が昔飲んでいた 牛乳とか
誕生日に頬張った 生クリームとか
甘い思い出ほど 固まったまま
苦い時が過ぎ カビが生える
このままでは私は見つけてしまう
腐ってカビの生えた母
白い骨と粉になった母
そして温度計が 午前零時を指した頃
白い母が 覗き見る
凍てた私の温度の変化 
お前もとうとう、腐ったね、って

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