音の寸景

静けさを計るウサギの赤い目
重力を油で滲ませた猫の目
繋がりから逃れたいブランコの軋み
掲示板から剥がされたくない
選挙ポスターの唸り
ウグイス嬢の声に
救われた議長を乗せた選挙カーに
手を伸ばす少女の、救われない、声
挙手した少女の手は縛られたまま運ばれ
行方知れずの歌を唄う
病葉の温度を計る風は
夕暮れ時をかけて 遠くの電車に紛れ込む
大松で動く機関車の炎にくべられる
火の怒りが「命乞い」をしなさい!
と、軍人に命令させる
命に「恋」を賭けない
少女の沈黙が 繋がり合っていた
全ての長いものたちの区切りで
軋みだしてゆく
ウサギの瞳が赤を零す頃 青い雨の銀糸が
シダ植物たちを
腐らせては 征服してゆく、の、を
知りすぎた、猫の眼
コトバの原始を 後ろ足で 横切って行く
    *
やがて 声が消える
コトバが地球を 支えきれなくて
ブランコの鎖でできた 夜汽車は
揺れながら 揺れながら
軋み続けることだけを 世界に教える

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