夜想

夜想
茅の外には蟋蟀がか細い音を
隅々に通わせていた
それは月光に曝された
虫の息
薄明るい十六夜
夜のかたまりが路の端へ流れながら
蒼白く行進してゆく
三叉路の標識に引っかかった
亡霊の衣擦れ
地蔵堂の扉が開いて鬼ごっこ
静かな月祭り
音も無く聞こえる笙の笛
皆を幽谷へ誘う
笙の笛
石を穿つ決意の哀しみは
黄泉路を振り返った
刹那に零した二人の
【あ】の火
無明の眠りから
何かがフッと囁いて二人の
【あ】の火が消え果てる
あるべきものが
在るべき国に還るのだ
おやすみなさい
胸の空洞から念仏が聞こえる

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