萌芽

萌芽
ひだまりに誘われて
なだらかな傾斜の苔むした土手に座り
私は春をスケッチする
やわらかな風は
頑なな桜の蕾に
息吹きを吹きかけ
陽光を注がれるまま
池の水面はきらめく
ごらん
こぶしが握っていた冬を
空へ放っているよ
水面は風にそよがれるままに
まばたきを繰り返し
乱反射する煌びやかなメロディーを
ゆるやかに泳がせる
山上の鉄塔たちが
灰色の鉛筆で
青空に落書きして
白い雲が一つ生まれた
光は平等に春を告げ
今 一枚の淡彩画の中で
私は確かに息づいている

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。