伝承

伝承
舞い落ちる枯れ葉のように
散りゆく花びらのように
ぬるい真昼の中に生きても
少しずつ 少しずつ
褪せていく人
忘却の底辺に押し込めた人
欠けてゆく私の命の中にも
今でも響く誰かの残声に
溢れる涙と
彩られた言葉たち
父親のてのひら
母の子守歌
友の激励は
まるで月の満ち欠けのように
細波を呼び寄せては
遠い胸の海辺に足跡を残して行く
残される孤独に命はざわめいて
鼓動が零れて
ぬるい昼間
こうしている間にも
地球から数人が消滅するが
彼らは鳴り止まない言葉を
人伝に接続させてゆく
十二時を指した時計台
授業終了のチャイムは鳴り響き
生きとし生けるものの営みを奏でて
いつしか人は棺に言葉を納める為に
静かに降りてくる夜を待つ
全ての人に終わらない歌
焼かれない肉体が最期に語る眠らない詩(うた)
退屈な真昼に
風に舞い落ちる褪せた枯れ葉が
やがて来る新芽に全て預けて
散りゆく

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