憧憬

憧憬
私が 滅茶苦茶だった頃
あなたは静かに現れた
世界が怖くて暴れる私の
頬に両手をあてて
  君に幸せになってほしいんだ
と 真剣に私を見つめた
深い慈しみと悲しみをたたえた瞳の炎
それは今でも絶えることなく静かに私を照らす
張り詰めたピアノ線に
桜の花片(はなびら)が触れて
音楽があふれだすように
私の中で あなたがこみあげる
 君を信じているよ
その言葉が今も私を生かしつづける
あなたは私の傷にそっと触れて泣いた人
そして奥さんを一番愛している人
真っ直ぐ振り向きもせず 家族のもとへ帰る人
憧憬
  それは
     多分
       恋の 
         銘つ名だ

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