叫号

叫号
あなたを
あなたを必要としている人がいます
今日のことは絶対忘れません
と 笑顔で言うおばあさんは
明日になると私の事を
忘れる病気だ
下半身不随のおじいさんを抱えると
今まで生きてきた命の重みが
寄りかかる
大学時代
寮に遊びに来た友人は
四季のない国で 夢に向かって戦っている
暗闇の中でパソコンを開き
先人たちの人生観と人間性に
哲学を模索する
息苦しさにも目を閉じて
眠れるようになったのは
大人になった証拠だと
言い聞かせる
   平和だったら神様はいらなかったのに…
幸せのパラドックスを空に向かって放り投げてみても
神様までは届かない
寝苦しい夜と、怠惰な朝を
認知できなくなる位生きた頃
スーパーの裏でつくられた
安いスチロールのパック詰めが
「お迎えですよ。」
と、最期にやって来る事を
私は知っている
だからあなたに会いたい
私の見てきた円みのない、淋しさを 哀しみを
溢れるほど抱えた声で
 この世界は素晴らしいと言って!
 僕には君が必要だって言って!
 産まれてきて良かったと思わせて!
と泣き叫ぶから
あなたには私を私ごと受け止めて欲しい
誰にも一人
誰かが必要なのです
あなたを
あなたを必要としている人が必ずいます
…まるで
暗闇でも光の花が咲くと
信じて待つ子供のように
行き場のない夢と
幼い愛をもて余して
私はあなたの名を呼ぶことでしょう

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