会社で自分のパソコンが不調なので、欠勤中の女性社員のパソコンを借りて仕事していると、「早く並んでください」という声がする。
某大企業のクライアントたちが何人も会議室に来ていて、大きな仕事を任せるにあたって、ぼくの会社の全社員面談を行うという。入り口で順番を待っていると「二階へあがれ」と声がした。また階段を昇り、別の会議室に移動する。
順番を待つ行列の一番目はKくんで、ぼくは二番目だ。二人は会議室の中を覗き込むようにして、中の様子に聞き耳を立てる。ちょうど一人の面談が終わった。クライアントたちはしばらく協議に移る。彼らの会話が漏れ聞こえてくる。「今度の仕事は詩人の黒田三郎に関するものなんですよね」「まだここに来ていないけど、一色さんという方がよく知っていると思います」「でも現場が遠隔地だから、無理かもしれないですね」…… ぼくのような高齢社員にはもう仕事は入らないだろうと思っていたので、ぼくは彼らの話に心底驚いてしまう。なんだか左足が半分麻痺しているようにも感じる。そこではっと気づいて後ろを振り返る。会議室の内部を立って聞き耳を立てているのは、ぼくとKくんの二人だけで、あとの同僚たちは廊下のベンチに皆、おとなしく一列に座っているのだった。
協議を終えたクライアントたちは鞄を手に、各自さっさと引き上げていく。どうやら昼食休憩になったらしい。ぼくも自席に帰ろうとするが、階段の途中に誰かが注文したらしい出前のうどんが置かれている。じゃまなので動かそうとすると、ぐらぐらして危なっかしい。器の下に小さな皿が置かれているので、かえって不安定なのだ。出前の盆は持ちやすいよう、下に皿が置かれているが、床に置くとかえって不安定になるのだなと思う。
オフィスに戻る。三列にデスクが並んでいる。二列目の真ん中が社長のU氏のデスクだ。ほかの社員のそれと全く見分けがつかない。「社長なんだから、もっとちゃんとしたところに大きなデスクを構えればいいのにね」と同僚に話す。