夕刻をたどる人からさびしい曲が流れはじめ
さよならを叫ぶ園児の笑顔からは明日がこぼれる
人は足あと分の音を抱えながら
無言でラーメンを啜ってみたり
背中に沈黙を乗せたり
明日に小さく期待してみたりする
広場から聞こえるギターは
逸る気持ちを訴えたり
たそがれには似合わない甘い色を光らせるが
夏の夜の底を潜る者たちには届かない
〝どこかの主義主張は燃やされていったよ〟
〝きっと全ての人にそれはおとずれるよ〟
きちんとした絶望とそれに変わるものを
教えてあげることが親切だ、と
中途半端に大人になった人たちが
子供を夢の住人にする方法を探している
星もない曇り空がつづいている。鳥たちは翼をたたみ鳥目になった。光り輝くものから無縁になりながらも、道路ではライトとネオンが交差し、ライターはその間で小さな火を燃やしつづけた。煙草に火をつける人と火をつけられた人が吐き出す、ホワイトグレーの息で街はおおわれ、鳥もヒトもケムリに巻かれる。今までしてきたことが道の上で立ち上り、蜃気楼になって記憶を蒸発させていく。誰もが吸い殻になることを知っていながら、見栄えのする火に先を挟まれ街でホタルになって消えていく。前もなく後ろもなく、ただやみくもに歩き靴をすり切らせてどんどん足はなくなっていくのに、立ち止まることを教える人はいない。
真ん中にいると信じていた。さよならの続きは〝また会える〟 ──
声は喉元でしまわれ奥底からはいつまでもさびしい音をつれてくるのに今晩も大人たちは子供に未来を描けと、うたいあげる。夏の街で人々は、花火も上がらない夜を見上げる。幼子たちは、カラカラに乾いた喉を空に向け、はぜる花火の音を口の中へと抱え込み、火傷の舌に小さな唄を乗せていく。

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