おいてけぼり

都会に行けば田舎に帰りたいと泣き
田舎に帰れば都会が忘れられないという
両親と恋人を秤にかけるくらいの、
推し量れない淋しさと重さを見ていたら
安住の地は無くなった
量り売りが得意になった
誰かを乗せて何かを足して二で割る
計算が早くなった
白より黒を、黒よりグレーを選んでた
気が付けば スマートに生きたいと
望めば望むほど ブヨブヨに太った
夜になると どこからか漏れる声がして
誰かがイヤラシイことをしている声だと思っていた
夜、声のする階下の深い溝に目をやると
溝からお母さんの生首が ぱくぱくと
何かを言って泣いている
口から発するのは私の声で何か苦しそうに
訴え続けていた
お母さんの口からたくさんの私が出てくる度
お母さんが泣いている
怖くなって窓の扉を閉め
鍵をしてカーテンを閉じると
暗闇が私に襲いかかる
おいてけぼりに投げ捨てたものを
拾いに飛び込む勇気もなくて
振り返らずに今日を走り去ると
鬼がどこまでもついてくる
※同人誌NUE掲載原稿①

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