シュレッダー

それは恋文でしたか
長く綴られた美しい文字でも
過去形になると
住所も名前も内容も
要らなくなってしまうのですね
中古屋で買ったシュレッダーに
「アパート」という文字を半分消されて
私は居場所を失いました
一緒に写した写真も 色褪せて
一度、弾けた花は バラバラです
シュレッダーを脆い壁に嚙り付かせ
粉砕していく部屋が おもい、のか
消し済みになるはずの「部屋」の代わりに
彼が その牙を折りました
(注意書き・四分以上続けて使わないでください)
   買った当時、あなたは面白がって
   吐き捨てた紙の文字たちは
   それぞれ遺言を喋っていたのに
   あなたは耳のない子供になって
   嗤いながら なにもかも抹殺していった
(注意書き・紙屑が詰まったら一時的に逆回転で)
   逆立ちしても見えない「しあわせを」を
   嚙み砕くことが出来ずにいる オンボロ機械
   部屋の角に牙を立ててアパートを半分だけ消して
   何かに引っかかった 消耗品
   ポッカリ空いた穴から
   セピアに寄り添う私たちのクズばかりが
   舞い上がる
         ※
(壊れ物につき、取り扱い・・・、 /注意)

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