狼煙

小さな町は大きな街に憧れて 
いつも大きな街の姿をテレビで見ていた
小さな町は大きな街が大好きだったけど
大きな街に行くと自分がいかに 
小さな町であるか知ってしまうことを恐れて
大きな街の悪口を 広報や回覧板で回した
小さな町が書いた小さな文字の注意事項は
いつも大きな街の悪口ばかりで
大きな記事にしたのは 小さな町の良い所
小さな町に住む人は 大きな街には行きたがらない
その町の公共機関という人たちが 口を揃えて
小さな町のことを「大きな街」と
大口たたいて大きな声で
目には映らないようにしていたから
大きな街と思っている人々の
造り上げたピラミッドの王様だけが
昼間に頭を抱え 夜にタバコをゆっくりふかす
(さて、この町を明日にはどんなケムリにまいてやろうか)と。
キセルから浮かび上がる巨大な街が 闇の中に
どろん、と現れ 誰にも知れずに消えてゆく

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