手鏡

「誰も彼も 渡ってくれば良いのです」
遺影写真に並ぶ祖父と祖母と父の目が
私をじっと睨み続ける
肉体の私を憎み後頭部の私の影に 三寸釘を打ち付けて
今日も十字路に磔にする
置時計が打つ音の回数に 正比例して滅んで逝くモノを
彼らは愛し、悲しみ、慈しみ、喜捨しては又、連れ戻す
丸い朱塗りの手鏡に映った眼の白さに血走った怒り、
その一筋に託された遺影と同じ目線、物言わぬ企みが
剥き出しのまま 交差する
上目遣いに黒い太陽を滴らせ 私は両目に夜を飼う
眼球に凍れる月の球を忍ばせながら
赤い鏡に浮かび上がる、その御霊たち
眉の黒、髪の黒、
その、黒を渡る血のざわめきを拝みながら
黒く冷たい理由を宿して
鏡は夜を嘲笑う

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