一滴の水

夜が瞼を開く瞬間、こぼす水の、まるさ
破水された、と誰かが告げている
       ※
胎児が泣き出す前に 夜に流す青白い炎
足跡もなく川を渡ってゆく男に
胎児と同じ重さの水が 土に還る
       ※
地上がひび割れないように 男を埋めた
スコップで傷つけた男の胸から
海があふれだし 淋しい産声が聞こえてしまう
       
       ※
夜明けの川面には 夢の粒子
男をぬらす 末期の水
唇から 感染する 蜜
女の いちばん やわらかい所で
男は ほどかれ ぬくもりに 燃やされてゆく

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。