夜を置く

デジタルの文字の数だけ姿見せラインのように近くて遠い
退屈な私たちに夜を置くスマートホンの便利な夜明け
東雲を鎌で研いだ三日月は昨日噛んだ爪の歪さ
山間を染め逝く夕陽の亡骸が蝉の骸の瞳に映えて
鈴虫に夜の始まり告げられて彼岸花の紅さを慕う
眠れない眠剤の罪の濡れ衣をカプセルにして飲み込む朝日
一人部屋独りの黒に馴染ませた瞼の奥にもうひとつの黒
くちびるが乾いたままでため息を吐き出さないで吸い込む遊び
眠れない夜をこじ開け眠らせる裂いた空から取り出す朝日
蟋蟀の一夜を浸す涼しさに壊されてゆく扇風機たち
残照の残り火みんな星になれその身一つの光を纏え

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 06_短歌 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。