正解

親指ですら右手と左手では 形が違うのに
なぜ簡単に手を合わせて 祈れるのだろう
感情線の皺に深さも その上がり具合や切れ目も違うのに
右手と左手を合わせて しあわせと言うコトバに
置き換えたりするのだろう
 昔 入水自殺した友人は
 いち、たす、はち、は、じゅうろく、だ、
 と、言い切って元気に解答した
 それを聞いた独裁者のような指導者は
 面白がって手を叩いては 世間に言い廻って
 笑った
 私も 笑っていた 
 多分・・・困ったような顔をして・・・
右手でいち、を指折って そこから左手で、はち、を足したら
両手で一本 指が余った
その曲がれない小指が 彼女のような気がして
私は彼女が溺死した池に 今も合掌することが出来ない
 どうして教えてあげなかった
 いち、たす、はち、は、きゅう、だ、と。
   (それって合ってる?)
 どうして指導者を名乗る常識人は逃げまわる
 彼女を殺した噂を未だに垂れ流しながら
 どうして彼女は最期まで言い張った
 いち、たす、はち、は、じゅうろく、だ、と。
   (それって、間違ってる?)
世界のどこかにいるもう一人の彼女が同じ答えを発する声が
水底から波紋の息を拡げて 浮かび上がる度
私の原稿用紙の端っこは汚れて ぶらさがりの句読点が
となりの句点の○の褒めコトバを
欲しがっては叫んでいる
夜に白い小指立てながらペンを握っている間だけでいい。
薄っぺらいこの世界に 正解のカタチひとつぶら下げて
黒い句読点、の、その先に来る余白たち
どうか、どうか、読んで欲しい
合掌できない多くの手のひらたちの
言い訳くらいには はみ出したくて
黒いぶらさがり、イコール、彼女の叫び 、

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