共食い

共食い
共食いの夢をみた
小さな車海老が 殻だけになった海老を
バリバリと 食べていた
青いインクの揺れる 四角い水槽から
延び上がった車海老
味塩と天麩羅粉が まぶしてあった
昨日の忘年会で出てきた姿、そのままで
塩とケチャップで 塗りたくられた赤い海老
湯あげで抜け殻になって 今、胴体を無くして
脚を食いちぎられているのは
一週間前に鍋に押し込められて
浮かんで食べた白い海老
二つとも 私が食べた海老なのだけど
赤い大海老に喰われる
小さな湯だった殻だけの
白い甲殻類をバキバキと
水槽からよじ上ってまで食べていた日々を
送っていたのは この私
引き締まった身だけを むしゃむしゃ食べて
要らなくなった殻を
ハイエナに与えていたのも
この私
共食いは毎日続いて
私を彩り縁取形どり
夜になると 頭の中で消化する
忘年会
冷えきった外を甲殻のコートで武装して
共食いの街を歩む
年を忘れるどころか 年を呼び覚ます夢が
今夜も枕を黒くする
ああ、もしかしたら
あの日 茹で海老を食べ続けていたのは
私と私の子孫ではないか
そして この私すら
共食いの理念を腹に宿した
「女」ではないか
「醜女」
確かに 夢の中の海老の顔は
私に似ていた

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。