彼岸花の影法師

彼岸花と影法師

寂れた公園のブランコに
射し込む夕陽と 鱗雲
私を見下ろす背の高い
夜間ライトの点滅が
今年の夏に 終わりを告げる
夕暮れ迫るあの空に
向かう流星 帚星
飛行機雲に 願いを込めて
ブランコ 揺らして ゆれている
足の上がらなくなった母の
時計を止めようとしたがる父の
その終焉の空を視て 
滲んだ空は どんよりと
赤くなっては 水になる
父母の骨を焼く 空を
私は私の水で 消せたらと
過ぎゆく季節に 地団駄踏んで
強くブランコの 振り子をゆらす
どんなに抵抗してみても
追いつけないし 追い越せない
白髪になった彼岸花
夜露を零して 黒くなる
先に逝った黒い花弁の赤い花
冠燃やして手ぐすね引いて
ここまで、おいでと
父母を喚ぶ
夜道のような 影法師
冠 亡くした 彼岸花
やがて 闇に呑まれては
見えなくなって 溶けたまま
私が歩む獣道 家路で待ってた 白い猫
二匹は 足跡 足音も
無いまま帰る 古い家
りん、と 鳴った鈴の音は
夜道の影への 抗いと
知っていたのか 死人花

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