少年の向日葵

少年の向日葵
焼け野原に
ひと粒 希望を植えた
今度帰ってくるときに
黒い雨を突き抜けて
太陽は咲いているだろうか
どうしても確かめたくて
ぼくのこころを 焦土に植え付けた
おんぼろ小屋や
瓦礫の合間を 潜って
廃屋のがらんどうを 越えて
真っ直ぐに見える
その黄色い希望の花は
真ん中にぎっしりと 黒い種つけては
ぼくの帰りを待っていた
(あぁ、ぼくが夢見たものは
   賑やかな子どもの笑い声と黄色い光)
回り道をしても 見える
太陽を揺るがす夏の花に
ぼくは瓦礫の街をはしゃいで走った
昭和のポケットに うずくまった
タイムカプセルの思い出は
今では
どこでも咲く六十年前の太陽の日差し
夏にニヤケて
照れくさそうに
焦げ焦げ顔で
囁く向日葵は
ぼくにだけ聞こえる声で
「ただただ、生んでくれてありがとう」と 
ひと粒
コトバのような 種を落とした

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