月齢

月齢
海が荒れている
深い底から彷彿と
なにかが躰を流れていくような
小さな月を身ごもるような
潮の渦
月の吸引力に支配されて
瞳から一粒の海が頬を伝う
女だけが孕んでいるいくつもの風と月の卵
晒らされたのは名月だけが知る裸体
胸の先尖が天に向かって赤く咲くのは
天から夜の乳呑み児がくるから
私は請われるままに授乳する
張った胸を腕で丸く包み込み
胸下のたわわな肉を揉みほぐす
月の使者を迎え入れた5日間は
躰の芯のマグマから
微熱色の母体のぬけがらが
ひたり ひたり
と散っては沈んで逝く
渦巻く流動的高ぶりは鳴り止まず
紅の激流と渇愛の濁流に
胸は揺さぶり 揺さぶられ
乾いた唇からたぎる血の悩みに
小さな情事も静寂に溶けてゆく
月の海でもう一人の私が覚醒し
裏側でもうひとりの私が死んで逝く
私の海を私は渡る
妖しい足取りで
したたかな女の顔で
歳月を重ねてゆく夜
私 月齢 1.5

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。