秋空の海原

秋空の海原
とある田舎の早朝に
鱗雲は光を帯びて
金色の日常に
私のおはようの瞳(め)が
隙間に挟まったまま
泳げない
鱗雲の向こう側には
宝島があるのだろうか
太陽が隠し持ってる
宝箱を目指して
この町の午前六時半は
動き始める
昨晩の空からの訪問者は
夥しい水しぶきをたてて
はしゃいで帰ったので
草花は朝露の重さに
うなだれたまま
艶美な光の粒に
身体を洗っている最中
空には大海 地上には楽園
この張り詰めた
一日の始まりに
自転車に乗って
部活動に急ぐ
詰め襟少年も
地上から空に
宝島を目指す
水夫のひとり
自転車ペダルが回るほど
動き始める秋空の海
軽くなって行く私の足取り
そして東の空からは
まだ見ぬ向こう側の笑顔たち
やがて始まりの鐘が
晴れた空に響き渡るだろう
私の胸にも
あなたの空にも

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