ぬけがらになった心臓
ちからない白い腕
青白い血管が浮かぶ両の脚
広げさせ 広げさせ 広げさせ
瞳孔だけを動かす 私の裸に 指先から脚の爪先まで
少しずつ 少しずつ
細く長い針を刺す あなた
痛みを感じるまで赦さないと誓う
あなたは
私を甦らすために泣きながら針を刺し続ける
私は青白い死体の標本だ
あなたの涙で黒い髪は艶やかに濡れて
青白い血色は蛍光色となって
悲しみが哀しみを呼び覚まし
恋しさと愛しさは同化して
動脈が振動し始める
全身に刺さった棘に灼かれ
羽ばたけぬことに赦しを請い 
苦痛の理由に涙を流す
死体から無痛の淋しさと悦びを背負って
私はいつか羽ばたくだろう
あなたが「蝶」という名の理由を授けた頃
私は標本箱の中で 一瞬だけ
綺麗に羽ばたける蝶
あなたはそっとその箱を
瞳にしまう
微笑みながら
微笑みながら

tukiyomi について

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