(妊娠は女が犯した最大の過ちであり
     その股から黙った子が悲鳴を上げるだろう・・)
そこは遠い星の国だった
夜になるとピンクのミニスカートを履いた宇宙人がいて
火星でヒラヒラと手招きして
地球飛行士の重い鎧を手慣れた技で脱がしてゆくのだ
銀色の鉛玉だけになった宇宙飛行士を挟み込むと
宇宙人は鉛玉を逆手にとってしなやかに絡みつき
やがて、ピン!と脚を張ると
飛行士たちは死んでゆくのだ
 という 魔法使いの言葉を信じたのは満月の夜だった
私は自分の中にある新月に手を伸ばし 初めて空に指を入れた
その星の国で出会った人を想像しながら 目を閉じてゆく
地球の大草原に放牧されたい囲われた馬の涙と
甘いお菓子を訪ねて歩く秘密の霊感少女と
廃屋の死骸ににシャッターを切るトーンの外れたジャズシンガー
饒舌の悪魔と契約を交わし
呪われた美に洗脳された王子の歌声を聞く
私はそのひとりひとりに種をもらった
花は一夜で狂い咲き ぬるま湯に浸かっていた
花びらは、朝に夕焼けのように燃えて広がり白い布を
灼いた痕だった
ショーツからはみ出した四つの滴そのままに
ホテルに鍵をかける
西日が血痕をいっそう焦がす頃 私の夏は過ぎようとしていた
私は産み直したのだ
あの日 私を犯した父 その人を
意味もなく 置き去りにしたくて

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