螺子

螺子
寝ている時間が長くなった
父の螺子が緩んで
肝臓から穏やかに血は流れ
肝機能は停止状態
寝ている時間が長くなった
母の螺子が錆びて
筋肉の凝縮にから激痛
ペースメーカーの心音は
時折 静止
寝ている時間が長くなった
私の螺子が横に倒れて
私の首
薬物漬けの注射器の穴
いつしか沈黙
独りがため息を吐き出し
独りが饒舌に罵り
独りが上手に雲隠れする
まだ生きていたいというわけでなく
まだ死にたくないだけです
人が死にたがるのは上手に生きられないのではなく
自由に生きられないからです
あぁ 誰か螺子を元に戻してくれませんか
緩んで 泣いた顔になる父の
錆びて 動けなくなる母の手の
傾いて 口から食べ物をこぼす私の
螺子を正しい方向へ強く強く回して下さい
朝 目覚めたなら朝日に向かって
おはようございます
と 弾む声で
家族が笑顔で動けるような
回り続ける螺子を
三本だけで宜しいですから

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。