春嵐

春嵐
幾つもの夜を抱いて
胸に描くは夜の月
春雨 憂い
夜の静寂に降る銀糸
闇に浮かぶ裸の輪郭は
剥離する眼にこびりついた
春の灯
三日月に横たわるあなたを
水が蹂躙する
紫淡の指先 曲線をなぞり
月光の如き肌は
歪な旋律に耐えられず
狂乱の蜜は滴る
真綿で首をしめるように
愛された躰に
牡丹の花弁は舞い落ちる
掌中で喘ぐ小鳥の
あいくるしさよ
恍惚と痛みを柩に納めよ
春乱
淫を誘い 白濁する視界
独り歩きする身勝手な独占欲は
あなたの骸を沈丁花と共に沈める
乾いた魂 青ざめた唇を
黒い爪でこじ開けて
口腔から溢れる紅の接吻
あなたの名を掠れた声で叫んでも
届かない恋
春嵐に
狂った二つ銘
紅の慟哭
月の沈黙

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