十六夜の月

十六夜の月
月夜見という
貴女だけの昔の神を知っているか
冥界を支配し
夜を静寂に帰し貴女の寝顔を細く強く照らして
月光で髪を梳くあの神だ
貴女の為だけに詩(うた)い
姫と蛇を
使い分ける卑怯な
アオイケダモノ
闇の属性 あの神だ
だが
あなたは神と呼んだ男は鬼だったのだ
奴を喚ぶ声は今は闇に溶けて聞こえなくても
覚えていて
月夜には月詠みの詠と指を愛でた猫
鬼の指を透明にて涙を隠した白い猫よ
自ら鬼の名を名乗り鬼を愛した貴女が天女
月夜見はただのフクロウ化けた鬼の二つ銘だ
されど
奴は言った
信じているから手放すのだ
貴女には輝く未来があるのだと
お互いの手首の傷口の言い訳を
知らない月に知らせなくてもいい
僕たちの七年間を知らない嘘月に媚びなくていい
おいつめたのは神の名を持つ黄泉使い魔
誘ったのは鬼女の名を持つ吉祥天
もし今
貴女が来るべき未来に震えているなら
十六夜に雨 激しく
交わらない二人
胸を射抜かれて死んでみようか

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