何も浮かばない部屋

何も浮かばない部屋
何も浮かばない部屋で
言葉の泡を
パクパクさせる魚が
泳いでいた
何も浮かばない部屋で
蛍光灯が短い剣を
キラキラ振り回し
私の目を乱視にした
何も浮かばない部屋で
過去の栄光の紙切れや女神たちが
クスクス笑って
騒ぎ始めた
何も浮かばない部屋は
窓辺にサラマンダーを飼っていて
化石にならない命を
炎で焼いた
何も浮かばない部屋で
私は羊を数えていた
外は火遊び好きの魔女たちが
古代語魔術を唱えていた
何も浮かばない部屋
無言の水槽から一足
飛びだせば
自分の叫びが鼓膜を破り
シーラカンスは眠りについた

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