この糸をたぐりよせれば
貴女の髪にたどり着く
濡れた髪に触れたとき
後ろ姿で震えた貴女
この糸をたぐりよせれば
成熟な夜にたどり着く
シーツの海を泳いだ人魚
忘れてしまった帰る国
この糸をたぐりよせれば
艶やかな声にたどり着く
唇から漏らされる母音が
長い列を絶やさない
糸の呪縛に捉えられ
肉体は透明さをおびて
精神崩壊の早さに
僕たちは地球上から
陰だけ遺して
姿を消した
この糸をたぐりよせれば
貴女の傍にたどり着く
珠玉の夜露から
糸を垂らした闇夜の娘

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。