のこすもの

のこすもの
僕が君に遺すもの
変な紙切れの束ひとつ
僕が君に遺すもの
インクとちびた色鉛筆
僕が君に遺すもの
苔になる躯
忘れないで
紅いランプの下
浮かび上がる輪郭
白い肌
月夜に交わした
くちづけの甘さ
菫の香に誘われた愛撫
やけくそになった
叱責同士の喧嘩
携帯から誘惑した
吐息と従順な柔らかい声
掠れた呼び名
墜ちた花弁
濡れた身体
零れた緋蜜
溶けた夜
激しい波の高鳴りに
啼いたナイチンゲールよ
籠は思い出を閉じ込めたまま錆びたのだ
電車が来るから僕は逝く
朝のこない電車に乗るのだ
僕が君に遺すもの
僕のわがまま
消える足跡
止まった時計
来ない春
君が僕に残すもの
精一杯の真っ直ぐな
僕だけ見つめ続けた瞳と涙
最期に僕が残した者は
愛した君
君自身

tukiyomi について

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