半端の瞳

びん
半端の瞳
君の一番好きな酒は
マーテルのコルドン・ブルー
ブランデーの中の一級品
なのに
僕にねだるのは 半端物の「桂花陳酒」
ただ甘いだけの安いリキュールを
君が好むのは
僕の瞳(め)の色が
この酒と同じ 色素の薄いシトリン石だからと 笑う
琥珀の鏡に笑顔がうつると
メラニンの少ない僕の瞳(め)は
眩しいものが苦手で
君が綴った掌編小説に目を移し 後ろから君を抱き締めながら
一節を囁いた
君が僕の瞳色 全てを飲み干して
午前3時の夢魔と戯れている頃
無粋な天使が夜会に現れ
「ハリネズミ同志の恋は破滅する」

半端な予言を残して 飛び去った
エゴイストの香が充満する部屋
彼女は何も知らない
ただ明日も僕の色を飲み干す夢物語に抱かれているのか 小さく 喘いだ

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