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2007年03月22日

「いっしょに暮らしている人 」(2)

この羽生槙子さんの詩集には、”いっしょに暮らしている人”についての詩が、このほかにもいくつか載っていますが、今日はちょっとまた違う味わいの作品を紹介してしまいます。
これは夢についての詩のようです。

                        旅芸人のはなし


              「わたしたちみんなで 家を捨てて
               旅に出ることになったの
               ピカソの絵の旅芸人のように
               サーカスをする人たちのように
               旅は海
               夕暮れ 海辺でわたしたちが地引き網を引くと
               魚ではなくて とりのからあげがあがってきた
               とても大きいからあげだった
               きたないような きれいなような
               けれど 地元の人たちが来て
               そんなおおげさなことをしてもらっては困る
               と言うから わたしたちはまた
               荷物をたたんで旅をしたの」
              夢のはなしを 朝 わたしは家族にしています
              そこから 波瀾万丈の暮らしがはじまった夢


              家を捨てて みんなで旅に出るはなし
              旅芸人になるはなし
              その先を わたしがもう覚えていないはなし
              だから だれも知らないはなし
              そこでわたしは何をし
              わたしの家族は何をしていたのだったでしょう
              わたしたちは 赤や青の服を着ていたようでした
              だれか上半身裸で だれかタンバリンを持ち
              地引き網は藻がからみ
              さびしくて サバサバして
              けれどお互い話したいことが次々あって歩き続けていた


                          ※

おもしろい詩ではありはませんか。その家族たちは(自分も含めて)今もどこかでその続きを暮らしている…そんな気がしてきませんか。私はこの詩の中で、2連目の「地引き網は藻がからみ」という1行が、この詩にリアリティを与えている気がします。詩の1行の力は不思議です。私は不思議な詩が好きです。                     

投稿者 ruri : 2007年03月22日 21:17

コメント

るりさま こんにちは。ひと雨降るごとに、一歩一歩、春がやってくるようですね。

この詩、すてきですね、わたしも、とても好きになりました。著者の方のことばのリズムが、旅をして世界を眺めながら歩いているようで、心惹かれます。わたしは、とりのからあげが登場するところがおもしろくて、いいなと感じました。とりのからあげが釣れて、金色の夕焼けやお魚の虹色の囁きなどが一緒に、海からあがってくるようなイメージがひろがりました。

『ねずみ女房』と清水さんの本、読みました。鳥かごの鳩の不自由さを想像して(それは、ねずみ風にしか具体的に考えることしかできなくても)痛みをじぶんのものとして感じるところや、弱った鳩が彼女を羽根で包んでいるところなどが、美しくて、奥深いお話ですね。

投稿者 ひだまり : 2007年03月27日 15:18

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