血を流す

血を流す
男は汗をかく
女は血を流す
それは化石にならない伝統
私の内にある「女」という血脈が
一人の強い「男」を受け入れるまで
血を流す
私は夢想する
三畳あれば十分の原っぱが二人の世界
あなたの引力が私の原子核中を破る時
小さくあげる悲鳴を合図に
教会の鐘は世界に響き
祝福の証が
口から温かく溶けだし
赤く紅く咲く
夜空の流星が私の頬を伝う頃
あなたの放つベクトルの強さたちは
宇宙の芯に焼かれ燃え尽き
やがて「一人」が
豊かな土壌に眠り落ち
私の中に
一本の名もない花を芽吹かせるだろう
今は来るべき甘い痛みと引き換えに
冷たく光る銀板にキチンとパッケージされた
褐色の楕円形の粒たち
手渡された瞬間
金切り声をあげた人々に
運命ごと連れ去れて行く
白い担架の上の女
うめき声と蒼白い手が
毛布から痙攣してはみ出す
彼女を追いかけ続ける緋色の滴
点滅しはじめた
手術中の赤いランプも
血を流す

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雛罌粟心中

「雛罌粟心中」
家を捨ててきたと言う
雛罌粟が咲き誇る赤い心で
死にたいと言う
蒼白い唇は
言葉を噛み砕いたように
真っ青なままで
ならば殺してあげる
私の美学で
私のやり方で
爪先まで咲かせて
散らしてから
止めを刺しましょう
寂しいは寒いに似てるでしょうから
雛罌粟風呂へ行きましょう
赤く咲いても
芥子の花
毒入り風呂で横たわる
貴女は何も知らない
白痴のマリア
手首に紅芥子の花
指先から身体中を
赤く染め
綺麗ね
と笑う白痴のマリア
私の瞳に一枚のモナリザ
切り取ったフレームに追い付けなくて
瞳を逸らせないまま
動けない
人は あからさまな悪意と
精錬な美の前に息が止まる
貴女は知らないだろうけど
毒風呂から剥き出しの
貴女をひざまづかせて
カンパリを無理やり口付けて差し込んだのは
貴女を拘束して
神に見せない為にだけ
力なく従順に開かれる唇から
火のような液体が溢れだし
デコルテを伝う鮮血は
炎となって秘所に堕ちて
雫は身体を焦がす
一人はアオイケモノになり
姫は蛇の舌で啜り泣き
カンパリとカルパッチョ
チーズに挟んだピンクローズと雛罌粟
こんなに美味しいものは
最初で最期ね
私たちは小指だけを
絡ませて赤い夢をみる
ねぇ、明日此のまま死んでたら
それはそれで幸せね
でも運悪く生きてたら
もう一度
貴女の心音の高鳴りを
聴かせてください
貴女は生きて活きて
雛罌粟畑を後にヒールを響かせ
帰ってゆく
でも確かに
弱い貴女は死んだのだ
雛罌粟風呂の中で
魂を奪われた私とともに
遥かなる赤い記憶
雛罌粟心中

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松ちゃん

松ちゃん
松ちゃん
昔な この井戸に嵌まって
死んだ子供がおるんよ
だから
儂はな ここで眠る松ちゃんの為に
盛り塩と菊を祥月命日に
供えるんや
そういってたお祖母ちゃんも
八年前に亡くなった
私たち家族は
この井戸の水を飲み
この井戸の水で風呂を沸かす
見えない家族が
もう一人くらい
身体に棲んでいる

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サヨナラ・ドクター

サヨナラ・ドクター
HEY ドクター
どれくらいの罪に
どれくらいの涙が似合うの
HEY ドクター
どれくらい金を積めば
どれくらいの痛みを塞げるの
HEY ドクター
退屈と憂いを買って頂戴
一秒後もあの子を愛せる薬を頂戴
物足りない言葉を饒舌にして頂戴
足りない頭で考えた
I LOVE YOU
指折り数えた
デートの日は
きっと地球最後のアダムとイブね
林檎をかじったら離れられないの
忘れられたらどんなに楽
覚えていたら溺れちゃう
夜は病みつき 身体にお手つき
万有引力が二人を離さない
HEY ドクター
アンタの薬でラリっているの
際限無く想像が膨らんで
あの子の中に入りたくて
届かない涙が一粒
流れて 堕ちた
HEY ドクター
真実のスタート地点を教えて頂戴
信じ続けたゴールまで
導いて頂戴
サヨナラ ドクター
今の憂いを
花束に変える呪文は
あの子がいつも唱えてくれるから
バイバイ
ドクター
バイバイ
私の 可愛いお医者様

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真昼の月

真昼の月
春琳の間をくぐり抜けて
見上げた空に真昼の月
風がトタンを激しくノックして
私を覚醒させる
道程から見上げた
真昼の月は
昔の私
直ぐに黄砂に掻き消されて
月は陰を色濃く残したまま
仄かな痛みに震えて
静かに目を閉ざす
月陰の闇に微睡む
春琳と隙間風
すら 涙を孕んで
恋に泣く

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虚無の詩

虚無の詩
胸の空洞に私の魂の死体
命の灯火を奪われても
暗闇で泣いてはダメ
廃人はポツリとも呟けない
孵りたい
新しい春の川辺のオタマジャクシでいいから
誰かに掬われたい
救われたい
そんな幻すら
泡沫の夢
振りきれない情熱は
もう 枕の下でガビになった
アパシーの意味を今更辞書で
調べる必要性は無駄なだけ
虚無が巨夢に膨らんで
どんなに瞳から雨を
降らせても
晴れた空は大欠伸

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春の涙

春の涙
「春の涙」
桜が泣く
花びらを散らしながら
あなたの才能を狭めたと
僕は桜を恨まない
この手で掬えるのは
君の思い
この手で救えるのは
君の未来
だから
文字はいらない
伝える言葉が壊れても
君のそばにいられるなら
それはなんて
美しい春の涙

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雪の花

雪の花
「雪の花」
貴方は瞳の虚空を映して
移ろいゆく景色に
粉雪の行方を占う
花は二つ
咲いたら黙る
咲いたら声が枯れる
貴方の温かさに
救われながら
花たちは
駆け込み乗車のような恋を
乗車券も持たずに
楽しむつもりだ
全く
かまくらの温かさも知らないくせに
春に向かって 花二つ
泣きながらヒソヒソ話

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輝き

輝き
輝き
私が貴方に与えた
唯一無二の
名に恥じることなく
唯、そのままに
有終の美を
世界に知らしめる
光たらんことを
祈る
貴方は
沈まずの太陽
私は
それに魅せられた
夕暮れの向日葵
貴方は天を焦がし
私は
頭(こうべ)を垂れ
土に涙を落とす
夏の夢は覚めず
また
夏の恋も然り
輝きて
輝きて
唯 輝きて

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雪の華     (恋歌)

雪の華
雪の華
舞い降りて ティアラみたいな雪の華 薫りは君だ そっとくちづけ   (乱太郎)
 
降り積もる温もりの夜に身を委ね 絡み合う恋 ひっそりと咲く    (月夜見)
咲ききって 激しく咲いて揺れる茎 時の雫に 溺れ流れる    (乱太郎)
白き地を 紅に染めて咲く華は 吹雪を喚んで 鮮やかに舞う   (月夜見)
風誘い 白鳥が舞う月明かり 話すことも歌うこともない    (乱太郎)
風強く 髪は乱れて芯は濡れ 挿した花にも痺れはとれず     (月夜見)
雪の華 枯れることなく凛として 恋の畔で君を見つめる      (乱太郎)
雪の華 見つめ合う視線は同じ 触れることなく褪めることなく
  
                           
                             (月夜見)
※「月夜見」は、宵野 倭の昔のハンドルネームです。
あしからず・・・。

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