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2011年06月27日

背後にあるまぶしさへの予感(あとがきから)

詩を書いていておもしろいなあと思うことがある。それはお互い、詩は知っているが相手には一度も会ったことがない、そんな人が圧倒的に多いからだ。それなのに詩誌の交換を何年もやっていると、昔からの知り合いだっけ、みたいな錯覚におちいる。作品を通して勝手にイメージをふくらましてしまうのである。お互いの日常の姿なんてほとんど知らないのに。まあ必要はないけど????でも詩はごまかそうと思ってもどうしてもその人の本質的な部分が出てしまうので、もしかしたら日常の仮面スタイルに惑わされないで、その人と対峙できるかもしれない。なんて思った。『二兎』同人の佐藤真里子さんは北の果てに住んでいる。詩がなければ、知り合うこともなくお互いの生涯を終える・・・はずである。ところが彼女の第5詩集『水の中の小さな図書館』の書評をある詩誌に書くという役がまわってきた。お互い見ず知らず・・・・彼女の詩集全部読んで勝手なこと書かせてもらった。やさしい彼女のこと、お菓子とか送ってきてくれたなあ・・・それから個人的つきあいが始まった。別にお菓子がきっかけではないです。詩が良かったからですけどね。

     ユダの軌跡
             佐藤真里子

   またしても
   のどが渇くから
   無言のあなたの愛
   という 手垢の濃い絆
   かるく ほどく
   「やっぱり おまえは・・・」と
   言われ続けてきた日々
   肝心な時には
   いつでも のどが渇いていた
   その度に
   水道水
   その度に
   私の宇宙 傾き
   その度に
   陽に背く座標へと
   走ってしまう私
   渇くのど
   潤す水
   多量なら
   落日 きれいなら
   捨ててもいい
   皮膚になじんだ朝夕
   稀薄になっていく胸の
   夢 入れ替えてもいい
   化粧などするものか
   お嫁になど行くものか
   少しずつ
   いびつになっていく地球の
   窮屈な日曜日
   歯など磨くものか
   パンツなどはくものか
   梅雨明け宣言 聞き流し
   堕落した雨に浸ったまま
   夏の欠落
   またしても
   渇くのど
   多湿と思う明日
                   第一詩集『ユダの軌跡』より

投稿者 eiko : 2011年06月27日 18:22

コメント

{詩は隠そうと思っても、どうしてもその人の本質的な部分が出てしまう}ということは、最近ますます実感します。詩表現を変えたいと思っても変わらないのは、
そのひとの(自分の)核心にあるもの、つまり思考方法が、感受性が、したがって生き方が、昨日の自分を踏襲しているからで、それが本質かどうかは別として、自分の中へ降りて行って、自分の意識を洗い直さなければ、(…は死ななきゃ治らない)っていうことになるのかもしれませんね。自分の中にもう一人いて、無言で自分を方向付けしている?と思えばそれもおもしろいですが。

投稿者 ruri : 2011年06月28日 10:26

確かに、隠しようもなく、そのひとの本質が、浮き出てしまう、その典型のような作品ですね。同じ価値観に立つ者には心地よく、「ちょっと違うな」という者にも、元気のよさは伝わるでしょう。たぶん、若いころに書いた作品だと思うので、たとえば、もし、いま、還暦を迎えていたとしたら、それでも、同じようなことを思っているのか、興味津々です。

投稿者 青りんご : 2011年06月28日 17:12

意識して思っていなくても、何かことが起きたときには目覚めるのでは? それほど深く無意識世界に沈んでいるとは思えないんだけど。

投稿者 eiko : 2011年06月28日 22:50

作者の激しさすきです。伝わって来ました。
皆さんのコメント面白く読ませて頂きました。
私は自分の本質と戦うために詩を書いているような気もします。

投稿者 ぺんぎんさん : 2011年06月29日 00:43

すてきなブログの誕生、おめでとうございます。この夏一番の暑さという今日、初めて訪問。ブルーがこのうえなく涼しげでホッとしました。ちなみに、いただいた月桂樹はこの陽射しでベストにドライアップ?できているし、きゅうりは身体をひんやりしてくれています。謝々。 

詩は、内容はもちろんですが、文字配列などもふくめ、どの詩人も感性のアンテナをはりめぐらして書き上げますよね。だから、詩集の縦書き作品が、ブログなどで横書きに変わると多少の違和感をもつことがあったのですが・・・ 今回、アップされたすべての
作品を味わわせていただき、内容のよい詩はタテでもヨコでも
関係なくよいのだ、と実感しました。

投稿者 KOZU : 2011年06月29日 13:17

KOZUさん ありがとうございます これからもよろしくお願いします。詩は確かに縦書きがいいですね
空間のとりかたがインプットされてる、脳内でね。 なんでブログって横書きしかできないんだろうか。
まあ できるのかもしれないけど・・・難しいことはデキネーです。昨日1時間以上かけて、せこせこ詩の紹介したのに最後で失敗、全部消えちゃった。まだ立ち直れず今日も書けなかった。でも時々来てくださいませ。

投稿者 eiko : 2011年06月29日 22:03

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