« 「詩と音楽」シリーズ最終回(4回目)に行く | メイン | 小春日和に »

2005年11月17日

「中村勘太郎・七之助 錦秋特別公演」を観る

近くの芸術館に、歌舞伎の公演があったので行く。今年その襲名披露で話題になった十八代目中村勘三郎の長男と次男。初めて兄弟による、しかも父親抜きでの共演だというが、今朝初めて蕾が開いたバラという感じの若々しさと艶やかさがあって,愉しかった。実は行く前はあまり期待していなかったのだが・・(といっても歌舞伎が詳しいわけではなく、何となく素人の感覚で)。やはり伝統の強さかなー。とにかく彼らは歌舞伎界のサラブレッドなのだから。『花伝書』に言う「時分の花」だなー。
演目は「蝶の道行」と次に芸談(アナウンサーによるインタビュー)、休憩が入り「妹背山婦女庭訓」と「団子売」。すべて台詞のない歌舞伎舞踊である。といっても、もともとは文楽の物言わぬ人形が演じる演題だから、義太夫が台詞を語る、お芝居ということになる。
すべて恋を主題にしたものを選んだそうで、最初は主君のために犠牲になった若い二人が死後蝶となって冥途への道行きをする、哀れにも美しく幻想的な踊り。三度の早変わり、舞台装置の転換などもあわせ見事で(初めて演じるという)、観客を先ず惹きつけた。
「妹背山・・」は、一人の男をめぐる二人の女の恋。内容は三輪山伝説やら大化の改新やらをまぜこぜにした妙な話だが、そんなことはどうでもよいのである。ただ好い男とそれをめぐる美女二人、お姫様と町娘の、上品な美しさと蓮っ葉な色気などの対比を見せようというもの。
「団子売」は、これまで演じられて定評となっているそうだが、なるほど軽快で楽しく面白く、「蝶の・・」のような大掛かりで派手ではない、細やかな見せ場があって楽しかった。これは屋台を持ち運んで売る団子売りの夫婦の話で、臼と杵で餅をつき、その餅をこねたり投げたりする所作、また最後は浮かれてお多福とヒョットコのお面をかぶって踊りだす。長年連れ添った夫婦の呼吸や機微が感じられ、和やかで親密な雰囲気が漂ってくる。この中にはマツケン・サンバも取り入れている、どこにあるか気をつけていてください、とインタビューで言っていたが、すっかり忘れていた。さてどこにあっただろう?
「蝶・・」と「団子売」は兄弟二人が、互いに男女を交替して演じていたが、それぞれになかなか色っぽく、
ヨンさまもいいけれど、日本の歌舞伎界にも魅力的な若者が次々に出てきたなあ、と思ったのであった。
帰りに空を見上げると、ちょうど満月で、冬を思わせる寒さの秋空にくっきりと中天にあった。

私は小学校に入る前から中学1年まで、祖母の趣味で日舞を習わされていた。舞台にも何度か立ったことがある。最後の舞台は「大原女」で、これはお多福の面をかぶった大原女の姿で前半を踊り、早変わりして今度は奴となり男になる、かなり難しい踊りだが、奴姿で纏を持って花道に走って見得を切る、その瞬間に拍手喝采、やはり気分の良いものである。遠い遠い昔のことである。

投稿者 kinu : 2005年11月17日 10:23

コメント

コメントしてください




保存しますか?