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2017年03月23日

冬の山

この冬の途轍もなく 
淋しい苛立ちのようなものを
陽に翳してみると 詩にならないか
胸の真ん中を刃で抉り取った
凍えた塊のようなものを 
お湯で洗ってみれば
言葉が染み出てくるのではないか

でもそれは ひどく恐ろしいこと
千年万年降り積もった山頂の雪が
一気に雪崩落ち 山の形を失わせるほどに
恐ろしいこと

人は涙ぐんだ山を見て 「山」とは呼ばない
山頂に冷え切った 夥しい怒りを抱えて
胸の真ん中にある修羅の道すら明かさずに
山は山の形をして 山のままで 陽に挑む

千年万年降り続ける雪のことなど
誰にも告げず
枯葉一枚にも愚痴をこぼさず
この冬一番の途轍もない淋しい苛立ちすら
武器にして
山は今、春の空へ 
沈黙を 突き刺す


抒情文芸選外佳作

投稿者 tukiyomi : 2017年03月23日 21:25

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