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2013年09月22日

墓標に名を彫る

墓標に名を彫る


どれほど
強い自己愛だけで
詩を綴るのか

紙が腐る程の
自分が吐く息
白いはずの紙は
黒く窒息していった
汗ばんでいく人間性

教室の裏側で 翻ったままで戻らない 答案用紙
あの夏 甲子園の決勝戦で
負けて歯を食いしばりながら
自分たちの夏の残骸を拾う野球児たち

たった一度のミスから
ファール球をキャッチ出来なくて
勝敗が決まったその青年は
一生涯をかけて
自分の骨を見つめて
暮らすのだ

ひと一人 生きるということは
全体の敗戦前で発狂しながら
個人として背負わなければならない未来の過失

体感の過ちは 
頭を責め 季節を凍らせたまま 
自分への墓標に
絶えず枯れた花束を 手向けること仕向ける

苦渋は辛酸と手を繋ぎ 笑顔を磔の刑にした
人の真夜中を垣間見た 詩人が
その光景を 描写しては 破り捨てる

 (歌えない夜に 笑っていない眼)

詩人の目は
いつも自分が まだ
ギリギリ 人であるかを知るため
墓にむけて 仲間の
文字を 刻んで
泣けるか泣けないか

  (人を見て 己の底を視る)

刻め 刻め
過去から続く
傷を引っ掻くように
強く 刻め
ファール球を落として
一生笑うことが出来なかった
青年の笑顔が
浮き出るまでに

お前が背負うべき
リスクの名前たちすら ファイルにして
生きた過ちをも 道連れに

人は 現世も 幽世も 
修羅を 逝く

投稿者 つるぎ れい : 2013年09月22日 23:24

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