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2011年07月11日

月美

月美

月美 お前の煤けたチョークのような肌の下にも 小さな双つの胸のふくらみの内にも 古から伝わる「女」という血族の血が 朱(あか)く 渦をまいているんだよ

だからお前はここに来た
暗い病室を飛び出して
病の茨をすり抜けて
化石になった僕の部屋で
今 白い花を咲かそうとしている

月美
おいで
お前の願いを叶えてあげる
お嫁さんにしてあげるよ
シーツはいつも冷たくないことを
暗闇にはやさしさがあることを
苛まれる悦びを
鬩ぎあう愛しさを
ほどかれない激しさを
爪の先まで 教えてあげるよ

覚めないおとぎ話を囁いてあげるから
命の芯まで 自惚れたらいい
子猫のような悲鳴をあげて
あとは波にさらわれたらいい

ごらん
海底に眠る君の体から透明な茎が
月に向かって伸びてゆくよ

月美
哀しいけれど
お前はそれを見ずに短い夏を逝く

お前が咲かせた花は
月下美人
儚さに背を向けて
薄明かりの部屋で
小さく悲鳴をあげたような花

投稿者 つるぎ れい : 2011年07月11日 00:53

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