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2010年08月19日

映画「キャタピラー」

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キャタピラーとは芋虫、尺取り虫のこと


延々と続く異形の夫と妻との濡れ場は、4回までは何とか我慢できた。
6回目までは数えた。
見てもらわねば一文にもならない映画ならではの仕組みだが、人前にさらされる夫婦の密かな営みは、ここでは哀しく大胆不敵でいやはや食傷気味だ。
中国戦線から戻ってきた夫は、手足が根元から切断され、傷が丸く盛り上がってふさがれ、耳が聞こえず、目も見えない顔半分には、ミミズばれのような無残な傷が残され、動けない芋虫になっていた。
何度も大写しになる夫の姿は、戦争のなれの果てはこうなんだぞと言っているかのようだ。
反戦映画なので仕方ないが、戦争以外の負傷でも他に例がないわけではない。
軍から無残な姿で、ぽいともどされて来た夫は、軍神としてあがめられ、勲章を3つももらい新聞にも書き立てられたが、妻は異形の夫を嫌悪しなじめなかった。
性欲と食欲だけが旺盛に残った夫との触れあいは、毎日のように暗い部屋の中で繰り返される性と食の湿り気を帯びたいとなみだけだった。
以前から妻は、うまずめ(石女)だと言って夫に暴力を受けていたが、今度は力関係が逆になりどちらにとっても壮絶な地獄がはじまった。
夫は戦地で強姦して殺した女たちの悪夢に悩まされ、終戦の日に芋虫のように這って家を出て池にはまって死ぬ。
これは、戦争によってもたらされた生地獄ではあるが、似たような生地獄は戦争以外でももたらされる。

*考え方の違いで、汚い言葉で難癖つけてくるコメントは受け付けていませんので御了承ください。

投稿者 mari : 2010年08月19日 08:40

コメント

書き込み実験です^^
原作は江戸川乱歩の芋虫ですね。
映画は観てないのですが、日嘉さんのブログを読むと、
内容の味付けは違うようです。
特に、ここ。
  ↓
>夫は戦地で強姦して殺した女たちの悪夢に悩まされ、終戦の日に芋虫のように這って家を出て池にはまって死ぬ。

投稿者 りーあ : 2010年08月28日 08:26

映画「キャタピラー」は反戦映画で、込められた主意は社会派的主張です。江戸川乱歩の小説「芋虫」に込められたものは耽美と飽くなき欲望の追求。妻のサディステックな行いは艶めかしく、夫の目を爪で潰すところはここまでやるかと言うくらい罪深い(反戦映画にはない場面)。小説「芋虫」では夫の目をつぶした妻が、後日夫の胸に「ユルシテ」と指で書き、妻が留守の時に夫が両手両足のない体で這って行って口にくわえた鉛筆で「ユルス」と書く。それを発見した妻が夫に分かったのだと言うことを知り揺さぶられる。夫と妻の魂が溶け合い、生々ししく哀れな性もそれについて書かれた言葉も昇天するところですね。胸にぐっとせまってきます。これがなければただのお色気小説でしょう。井戸に落た夫の死には、死に向かう余韻が感じられます。
丸尾末広の情念画の「芋虫」もさっそく読みました。小説に忠実で妻にも独特な色気があります。女優の寺島しのぶには恥も外聞も打ち捨ててしまったようないきなりの迫力があるばかりで、躊躇や恥じらいが見つかりません。
杉本一文さんの銅版画展には横溝正史の「髑髏検校」はありましたか?

投稿者 星笛館主 : 2010年08月29日 05:29

書いたコメントがなぜか消えていましたのでメールにしました。

投稿者 星笛館主 : 2010年08月29日 06:39